「農地開墾」と称し、下の空き地の草を刈って畑にしているわけだが、実は、この空き地には、使える植物がいろいろ生えている。

 バナナは何カ所かで群生し、定期的に大きくたわわな房を付けてくれるし、シンコン(キャッサバ)もあちこちに生えている。タロイモも、オカワカメ(雲南百楽)もある。いずれもほぼ野生化してはいるものの、健やかに育っているのだ。

 それらを採ってきて、食卓に載せる。感覚としては山菜採りに近いかもしれない。あるからと言ってそれを料理する必要はないし、実際これまではバナナの実以外はほぼ触れずにいた。が、今はこうして時間があるのだから料理してみたい。食べてみたい。

収穫した、右から時計回りに、シンコンの葉、バナナのつぼみ、シンコン芋

 この日は、シンコンの芋と葉、そしてバナナのつぼみを収穫した。

 なじみのあるシンコンは大丈夫。問題はバナナのつぼみだ。このコロナこもり以前は、食べたことはあっても自分で料理したことはなかった。そういう食材を前にした時、普段なら、ビビ(この家に20年近く来てくれている通いのメードさん)に聞けば何でも教えてもらえる。けれど、ビビにもお休みを取ってもらっている今、頼れる人がいない。

 先月、初めてバナナのつぼみを収穫した際、ざっとインターネットで検索し、「苦みを除くために下ゆでする」という情報を得ていた。そして、まあわりとおいしく食べられた。ということで、この日は2度目のバナナチャレンジ。空き地のその下にある雑木林で採ってきた未熟パパイヤと、庭で採れた唐辛子も用意して、いざ。

 バナナのつぼみは、まるでタケノコのよう。皮のようにみえるガクを一枚剥(は)がすごとに、一列に並んだ花たちが現れる。もう一枚剥(む)けば、また一列。

 この花を食べるのだが、さすがに外側の花たちは育ち過ぎて苦そうだ。一体どの辺りから食べられるのか、教えてくれるビビがいないので「見た感じおいしそう」を基準に自己判断する。

 どんどん剥(む)いていく。内側に行くほどに、ガクは赤からクリーム色になってくる。赤いガクは繊維質で硬いが、内側の部分なら軟らかく食べられるというのは前回で学んだ。食べられるのはどの辺りからなのか、これも自己判断。

 櫛(くし)形に切ってみると、写真を撮っている場合ではないくらい、みるみるうちに黒ずんでいく。恐るべき、バナナのアク。沸騰させておいた湯にあわてて放り込む。

 花は花で、房をばらしてから別の鍋で下ゆで。いったんゆでこぼしてから囓(かじ)ってみるが、まだ渋いので再度湯を沸かし、塩を足してから再びゆでる。ころ合いで上げて、水に取ってすすぎ、柔らかく絞ってから、刻んだパパイヤと合わせる。

 唐辛子、ニンニク、ニラ、ミント、パクチーを刻んで合わせ、塩と砂糖と魚醤とライムで味を整える。冷蔵庫にあった食欲そそるものをかき集める感じで。

 さらに、プテ豆(これもパパイヤ同様、下の雑木林に生えている。大量に実を付けた時にビビが収穫して来てくれた)の酢漬けも刻んで加える。おいしい和え物になった。

 さて、再びガクの方。二度ゆでして渋味は抜けたものの、すっかり黒ずんでいる。こんなはずではなかったと落ち込みながらざく切りにし、同じように下ゆでしたシンコンの葉と合わせ、シャロットとニンニクを飴(あめ)色に炒めてから、刻んだ唐辛子と塩と砂糖を加えた「サンバル・バワン」で和える。

右がバナナのがくの炒め物、左がバナナの花の和え物

 バナナのつぼみの「黒くならない、正しい下処理の仕方」とかが、きっとあるのだろう。もしくは、黒くなりにくい品種とか。ビビなら知っているはずなのだ。いつかビビに「違う、そうじゃない!」と指導されながら、この我流のバナナ処理を正してもらいたい。そして、スンダ風のバナナのつぼみ料理を教わりたい。

 そう思っていたところに、ビビの娘たちが、手作りのレバランのクッキーを届けに来てくれた。みんな元気にやっていると言う。よい知らせだ。そして空き地には、また新たなバナナのつぼみが生まれている。

 

西宮奈央(にしみや・なお)
2004年よりインドネシア在住。ジャカルタでの日系企業勤務を経て現在はフリーの通訳。業務スケジュールの合間を見つけてはインドネシア各地へ旅をするのがライフワーク。ただいま、スケジュールが空っぽな上に旅行にも行けない外出自粛ジレンマで「これが終わったら行く所リスト」が伸び続けている。

 

西宮奈央さんのMASAK KIRA-KIRA バックナンバー
#1 イチゴとクマンギのシャーベット
#2 ココナッツ・レモン・チキン
#3 ソムタム2種
#4 パン粉のスープ
#5 花椒風味の中華風チキン
#6 キャロット・ジンジャー・ケーキ
#7 タンドリー風の焼き魚
#8 桜色のビーツのペスト
#9 チェコ風ジャガ芋のパンケーキ
#10 ナツメヤシのトリュフ
#11 ラープ
#12  キャッサバとココナッツの焼き菓子
#13 3色のスープ
#14 アボン・イカン
#15 イカン・カンジョリ
#16 トウガラシのジャム
#17 カリフラワーのスパイシー・フリッター
#18 ベトナム風蒸し鶏とスープ(フォー・ガー)

 

【インドネシア居残り交換日記】 
DAY 1 賀集由美子(チレボン) 2020年4月28日 怒濤の「2コマ漫画」マスク作り

DAY 2 横山裕一(ジャカルタ) 2020年4月6日 マスク越しの会話

DAY 3 西川知子(ジャカルタ) 2020年4月19日 とある休日

DAY 4 成瀬潔(バリ) 2020年4月25日 嵐が過ぎるまで

DAY 5 成瀬潔(バリ) 2020年4月26日 飼育係

DAY 6 ダグソト(ジャカルタ) 2020年4月29日 会社にヒョウが出た!

DAY 7 西宮奈央(バンドン) 2020年5月6日  カボチャが採れるころ

DAY 8 池田華子(ジャカルタ) 2020年4月6日 ジャワの農村バティック

DAY 9 池田華子(ジャカルタ) 2020年4月9日 子猫を拾った

DAY 10 岸美咲(ソロ) 2020年5月10日 ジャワの芸術家のエネルギー

DAY 11 松下哲也(東ヌサトゥンガラ・アドナラ島) 2020年5月10日 日曜の釣り

DAY 12 名取敬(ジャカルタ) 2020年4月某日 任天堂タイム

DAY 13 岡本みどり(ロンボク) 2020年5月10日 断食月の食事

DAY 14 賀集由美子(チレボン) 2020年5月11日 PSBB下でのバティック製作

DAY 15 武部洋子(ジャカルタ) 2020年5月19日 母は日記を書く

DAY 17 轟英明(チカラン) 2020年3月15日〜5月24日 新しい日常

DAY 18 名取敬(ジャカルタ) 2020年4月某日 酒とテレビと囲碁タイム

DAY 19 松下哲也(東ヌサトゥンガラ・アドナラ島) 2020年5月24日~29日 魚づくしごはん

DAY 20 岸美咲(ソロ) 2020年5月27日 ガムランの「うちで踊ろう」

DAY 21 宇田川朋美(東ジャワ・クディリ) 2020年6月1日 こんな時だからこそ、家でおいしいものを

DAY 22 池田華子(ジャカルタ) 2020年5月23日 じんごろう、その後

DAY 23 西川知子(ジャカルタ) 2020年5月5日 バティック、バティック、バティック

DAY 24 岡本みどり(ロンボク) 2020年6月1日 家庭菜園ズボーラ

DAY 25 高野洋一(ジョグジャカルタ) 2020年6月2日 時間があるといろいろ考える

DAY 26 村田真理子(ジャカルタ) 2020年6月4日 #大人になってまでなわとびするとわW