皿がずらっと並んで好きな料理を好きなだけ食べられる。ご飯に合うおかずがいっぱい。香辛料を効かせて「間違いのない」味。インドネシア人も日本人も、「みんな大好きパダン料理」。しかし、油やココナッツミルクをたっぷり使い、高カロリー高コレステロールが心配な料理でもある。さてそこで、健康なパダン料理、「ベジタリアン・パダン」はいかがでしょうか?
おいしいことが一番、健康は二番
「ロカ・パダン」はジャカルタ初のベジタリアン・パダンの店。素材は全て野菜だが、味付けはパダン料理という所がユニーク。ピュア・ビーガンで、肉好きにも受けるような肉っぽい外観にしているわけではない。代替肉は使わない。食べてみると、ちゃんとパダン料理でありながら「さっぱりしているな」という印象。「あっさりめのパダン料理」と言っていい。
「ロカ・パダンを始めた理由は、お腹が空いたからです」と創業者のアイリーン・ウマールさん(36)は笑う。アイリーンさんは約3年前にベジタリアンになったが、「インドネシアでベジタリアン食と言うと、サラダ、サラダ、サラダばっかり。私はグルメ旅行をするぐらい食べることが好きなので、困り果てました」。
アイリーンさんの突然の「ベジタリアン宣言」に家族も当惑し、「じゃあ一体、何を食べるの?」と、「問題児」扱いをされてしまった。食べる物を自分で探さないとならなかった、と言う。
アイリーンさんがベジタリアンになった理由は、肉を食べると体内のエネルギーが滞ると感じるようになったことと、環境保護のためだ。「菜食一回で水約1400リットルを節約できると言われています。環境問題について知れば知るほど、自分でも何かしなければ、と思うようになりました」。
環境と健康のためにベジタリアン食を始めても、立ちはだかる壁は「食べる物がない」。「ベジタリアンになりたいけど(食べる物がなくて)難しい、という友達はたくさんいます。私にとっても一番重要なのは、おいしいことです。健康は二番目です。健康というだけでおいしくなかったら、ハッピーな生活にはならない」とアイリーンさん。
そこで注目したのが、インドネシア中で広く好まれているパダン料理だ。民族、時には国の垣根も越えて、好まれている。まずは肉の代わりとなる食材のリサーチを始め、それからシェフにアドバイスを求めた。
こうして生まれたのがロカ・パダン。材料は芋、キノコ、ナスなどの野菜。ムリンジョの実、プテの実など、インドネシアで採れる野菜は何でも使う。代替肉は「体や環境に良くない加工食品」として使用しない。
ジャガ芋とキノコのルンダン
パダン料理の代表格である「ルンダン」(牛肉の煮込み)は、ジャガ芋とキノコの2種類がある。ジャガ芋の方は食感に「肉っぽさ」があり、なぜかインド人が大好きだという。キノコの方はもうちょっとキシキシした歯ごたえで「皮好き」にお薦め。
キノコのルンダンもジャガ芋のルンダンも、使っている香辛料は同じだ。パダン料理と言っても地方によって味は変わるが、各地の味をミックスさせている。通常のパダン料理と違う点は、牛肉のルンダンは数時間かけて煮込むが、ベジタリアン・ルンダンだと1時間程度で済むこと。
パダン料理はココナッツミルクを多用するので、コレステロール値を問題にされることが多い。ロカ・パダンでもココナッツミルクは使う。アイリーンさんは「栄養士に聞いたところ、ココナッツミルクや油といった天然素材は基本的には体に良い。これらが悪者にされるのは料理方法による。ロカ・パダンでは、調理時間を短くし、ココナッツミルクをあまり濃くしないようにしています」と語る。
パダン料理のもう一つの代表格である、とろみを付けたカレーソースをかけた「サテ・パダン」。これは「(肉と)だまされます」(アイリーンさん)という出来映え。材料はキノコと豆腐なのだが、「これは皮でしょ?」と言う人が多いそうだ。
人気はこのサテ・パダンに、牛乳を豆乳に代えたテ・タリック。野菜料理は軽い、お腹にたまらない、という印象があるが、ロカ・パダンの料理はしっかりと香辛料のパンチが効いた味付けで、満足感がある。
今後は、ベジタリアン・インドネシア料理をパダン以外にも広げていきたいと考えている。
Loka Padang
https://msha.ke/lokapadang/
https://www.instagram.com/lokapadang/?hl=en
デリバリー可。
ジャガ芋のルンダン(Rendang Kentang)、キノコのルンダン(Rendang Jamur)各2万5000ルピア、サテ・パダン(Sate Padang)3万ルピア、テ・タリック(Teh Tarik)250ミリリットル2万9000ルピア、1リットル11万5000ルピア