インドネシアを代表する彫刻家や画家らの作品の展示会、「ニョマン・ヌアルタと国内外の画家展(Nyoman Nuarta, Local & International Painters Exhibition)」が11月30日まで、プラザ・スナヤンで開かれている。日本での美術館と違ってガラスもなく、触れられるほどの間近な距離で見られる。インドネシアの一流の彫刻家・画家の作品を見られるチャンスだ。
ニョマン・ヌアルタは、バリ島のガルーダ・ウィシュヌ・クンチャナ像の制作者として知られる。カリマンタンに移転が予定されているインドネシア新首都の、巨大なガルーダが羽根を広げた大統領官邸デザインも話題を呼んだ。
プラザ・スナヤン1階の吹き抜けホールに展示されているのは、ボロブドゥール寺院の重厚さと繊細さを表現した「ボロブドゥール(Borobudur)」、渦巻きのような円が3つ重なった「命のサークル(Circle of Life)」、ユーモラスな表情とポーズの「寝るヒョウ(Sleeping Leopard)」一対などの計6点。
ニョマン・ヌアルタの彫像のほかに、目玉として展示されているのが、オランダ人画家ルドルフ・ボネ(1895〜1978)が1929年にバリ島ウブドへ来てすぐの時期に描いた「アルジャの衣装をまとった王(Radja in Ardja)」。縦110センチ、横79.5センチという大きな紙に、踊りの衣装姿のバリ人男性が精緻な筆致で描かれており、ボネの作品ではこれが最大となる。
「戦争が近付くにつれて紙が不足し、だんだん絵が小さくなっていきます。これは100年近く前に描かれたミュージアム・クウォリティーの絵です」とキュレーターで美術品コレクターのエリックさんは語る。ちなみに値段は約8000万円と言う。
明るく幻想的な色彩で、闘う鶏2羽とその戦いに見入る人々を描いた、ヒダヤットの「勝利に向けて戦う(Bertarung untuk Menang)」も展示作品の一つ。ナイフで描く手法が特徴で、盛り上がった絵の具跡が生々しい。
人気のアファンディの作品も一点、展示されている。アファンディは、絵の具をチューブからキャンバスに直接出し、筆ではなくて手を使って描いたことで知られる。そのダイナミックな跡を間近で見ることができる。
日本で美術館へ行くと、絵までの距離が遠い上、ガラスが反射して非常に見にくい。この展示会では、ボネットの絵だけがガラス張りだが、それ以外はむき出しで置かれている。アファンディの絵は11億ルピア、「ボロブドゥール」は18億ルピア。こうした作品も、触れられるぐらいの近さで見られる。
追記(2021年11月5日)
11月5日現在、吹き抜けホールでの展示は終了し、ヌアルタの彫像は廊下に並べられています。また、ボネ、アファンディ、ヒダヤットの絵はなく、現代画家の作品のみの展示となっています。