文・写真…鍋山俊雄
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 バンテン州というと、ジャカルタ在住者にとってはすぐお隣。スカルノハッタ空港に着陸した際のアナウンスにもある通り、スカルノハッタ空港もバンテン州である。このバンテン州にはバドゥイの村や一角サイのいるウジュンクーロン国立公園のように、いくつか興味深い所があるが、もう一つの顔となっているのがバンテン王国の遺跡である。
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 バンテン王国は16〜17世紀にかけて、国際的な商業都市として、中国、ポルトガル、トルコ、アラブ地域と盛んに交易を行った。17世紀末にオランダと交戦、1683年にオランダが勝利してから、オランダのジャワ島統治が広がっていった。ジャカルタからジャワ島西端のメラック(Merak)に行く途中の、セラン市(Kota Serang)のカランガントゥ(Karangantu)駅周辺がその地域に当たる。

 車をチャーターすれば、混んでいなければジャカルタから往復3時間程度で行けるが、ジャカルタからメラックへは1日に数本、急行列車が走っている。ジャワ島外への「弾丸旅行」では飛行機を使うが、ジャワ島内で、時間に余裕があれば、列車でのんびり行くのも楽しい。
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 バンテン王国の遺跡のあるセランまでは、午前7時ごろに北ジャカルタのアンケ(Angke)発メラック行きの急行に乗れば、約3時間半かかってカランガントゥに着くことができる。料金はなんと、片道たったの8000ルピア。

 ただ、この急行は1日数本しかないため、日帰りにしようと思うと、現地滞在時間が4時間弱になってしまう。そこで、帰りは少し移動して、セランを午後3時半ごろに出発する乗り合いバスを予約した。

 朝、アンケ駅のホームは人であふれている。東ジャワ方面に向かう特急とは違って自由席なので、客車がホームに到着するや、皆、押し合いへし合いで乗り込む。椅子は駅のベンチみたいなプラスチック製。冷房はないだろうと思っていたが、家庭用エアコンが1両に数台ずつ設置してある。
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 走り始めた列車の車窓は、見慣れたジャカルタ近郊の風景から、だんだん、田園風景に変わってくる。停車時間が比較的長い駅では、物売りが窓の外だけでなく、車内もにぎやかに練り歩く。バドゥイの村へ行く拠点となるランカスビトゥン(Rangkasbitung)駅を越えてからは、北の海岸方面に登り始め、セランを越え、ようやく午前10時半ごろにカランガントゥ駅に到着した。
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 見所は、頑張れば、この駅から歩いて行ける距離にある。あらかじめチェックしておいたグーグルマップスを見ながら、歩くことにした。

 まずは16世紀初頭に建てられたスロソワン王宮(Keraton Surosowan)。土台しか残っていないので、あまり見る物がないが、ここからバンテン大モスク(Mesjid Agung Banten)や旧バンテン博物館(Museum Banten Lama)の辺り一帯が観光エリアとなっている。
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 旧バンテン博物館には、昔、港を中心に栄えたバンテン王国の歴史を示す展示が揃っている。敷地内には大砲の遺跡もある。
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 メインとなるバンテン大モスクは16世紀初頭、バンテン国王のマウラナ・ハサヌディンの時代に建てられた、インドネシアでも有数の古いモスクだ。独特の5層屋根を持つ。高さ20メートル余りの塔が横に立つ。バンテン王国の歴代スルタン(王)とその家族の墓もある。行き交う人も多く、周辺は門前町のようにカキリマや土産物店で賑わっている。
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 モスクを抜けて、少し外れまで行ってみた。オランダが海からの外敵に備えて建造したというスピールウィク砦(Benteng Speelwijk)と、16世紀に建てられた中国寺院(VIhara Avalokitesvara)がある。いずれも、当時の栄えたバンテン王国の雰囲気が感じられる。
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 インドネシアにはこのように「Benteng(砦)」と呼ばれる遺跡があちこちにある。修復されているもの、されていないものの両方があり、街外れの高台あるいは海沿いに、広大な遺跡として残っていることが多い。このバンテンには城壁ぐらいしか残っていないが、それでも、高台で一休みして景色を眺めながら、当時の雰囲気に思いを馳せるのは楽しい。

 カランガントゥ駅まで戻り、少しセラン方向に下ると、19世紀初頭にスルタン一族が住んでいたカイボン王宮(Keraton Kaibon)跡が住宅地域の横にあった。こちらはまだ時代が新しいためか、城壁や門の一部などが残っていて、少し建物らしい。港周辺も見たかったが、ジャカルタ行きのバスの時間があるので、セランに移動することにした。
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 セランからジャカルタまでのバスは7万ルピア。高速道路経由で渋滞もなく、約1時間半で、午後5時ごろにジャカルタに帰り着いた。多少あわただしいが、予定通りに日帰りバンテン旅行を終了。

 車で行けば、もっとバンテンでの滞在時間も増え、バンテン内の移動も簡単になる。しかし、車内と沿線の人々を眺めながらの列車の旅も悪くない。

 
 
#0 空港
#1 北スラウェシ州 インドネシアの最北端?
#2 アチェ州 インドネシア0キロ地点と津波の跡
#3 ブンクル州 英国の砦、スカルノの足跡
#4 南カリマンタン州 川の街の水上マーケット

鍋山俊雄(なべやま・としお)
インドネシアに在住期間は計10年になる。仕事でジャワ、カリマンタン、スマトラへの出張が多いことに加えて、「週末弾丸トラベラー」としてインドネシア各地を放浪し、全34州を訪問した。