文・写真…鍋山俊雄

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 最近また、ジャカルタの首都機能移転が検討されているというニュースがあった。前から何度か浮かんでは消えている話であり、今回、名前が挙がったのは中カリマンタンにあるパランカラヤであるが、しばらく前に、ユスフ・カラ副大統領が別の都市の名前を挙げたことがある。それが、2004年に南スラウェシ州から分離した西スラウェシ州の州都マムジュである。

 南スラウェシ出身のカラ副大統領によれば、マムジュはインドネシア地図上でちょうど中間に位置し、スラウェシ最大の都市マカッサルからも中スラウェシ州州都のパルからもアクセスが良い。確かに、改めて地図を見てみると、そうかもしれない。しかし、インドネシア人の友人に「マムジュ」と言っても、ピンと来た顔をする人にはあまり会ったことがない。

 このマムジュに行くには、スラウェシの玄関であるマカッサルからプロペラ機に乗り換えて、およそ1時間である。マムジュの小さな空港に降り立つと、市の中心までは、山間の道を車でおよそ1時間余り。空港からのタクシー運転手に「マムジュ観光では、普段、どのような所に行くの?」と聞いたら、うーんと考えながら、いくつかの海岸や滝などの名前を教えてくれた。

 このマムジュから東に向かい、山を越えると、タナトラジャのある南スラウェシ州である。トラジャではクリスチャンのトラジャ人が中心であるが、このマムジュはマンダル人が約半数を占めており、イスラムが多数派を占める。

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高床式の伝統家屋

 ようやく街に入って山の方を振り返ると、2つのオブジェが目を引く。

 1つは立派なモスクだ。私は旅行に行った時には必ず、「Mesjid Raya」や「Mesjid Agung」と呼ばれる、そこで最も大きなモスクを探して写真を撮ることにしている(東部に行くとクリスチャンが多くなるので、教会の方が立派になっていくが)。ムスリムの多いインドネシアでは、どんな小さな村でも、大きな街でも、モスクがある。デザインに凝ったり、海の上にあったり、伝統建築を組み合わせたりと、見ていて楽しい。34州のほぼ各州でモスクを見てきたが、色合いやデザインという点で、個人的に、このマムジュで見たモスクは最も美しいモスクの1つだ。

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 もう1つのオブジェは、山の上に並ぶ 「MAMUJU CITY」の看板である。Hollywoodの看板のように山肌に都市名を掲げているのは、私が見た中では、JAYAPURAとBATAMと、ここMAMUJUである。

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 ホテルはさすが州都で、思いの外、立派。部屋の窓からは、すぐ目の前に島が見える。まずは、その島(カラムプアン島)に行ってみようと、港を探すことにした。ホテルのフロントで、島に渡る船はどこから出ているのかを確認すると、ホテルの目の前の大通りの突き当たりにある小さな港から出ているとのこと。

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市内の立派なホテル

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夕食は焼き魚

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ホテルの窓からカラムプアン島が見える

 ホテルの前はジャカルタ並みの片道3車線、合計6車線の大通りである。とは言っても、車は片道1車線でも余る量しか通っていない。

 港までオジェックで。島までは船で30分ほどで行けるが、客が集まらないと出航しないとのこと。夕刻に近付いていたこともあり、交渉してチャーターすることにした。

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カラムプアン島へ行く船の出る港

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チャーターした船

 島に着くと、結構きれいな浅瀬の海岸で、シュノーケリングが楽しめそうである。島民は島の外周に沿って海沿いに居住しており、小さい村がいくつかある。家の多くは海沿いにあり、庭先に船が停留してある。多くは漁民だ。

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シュノーケリングの名所だ

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あいにくの曇りだったが、島の海は美しい

 海岸の村をしばらく散策すると、大きな天幕で作った集会所があり、色彩豊かに装飾している。その日の夕方に結婚式があるそうで、村の人々が集まり始めている。写真を撮っていると子供たちが物珍しそうに寄って来た。

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島の結婚式のカラフルな飾り付け

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島の子供たち

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家の裏手には「自家用船」が停泊

 船で元の港に戻り、夕暮れの街を散策した。先ほどの真新しい大通りにはショッピングモールが建設中である。州都として、いろいろ整いつつあるのだろう。一方で、その道路の反対側には、歴史を感じさせる2階建のルコがある。

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昔ながらのルコ

 

 ホテルへ戻る道すがらの海沿いには市民の憩いの広場があり、賑わっていた。先ほどの大モスク横の広場では、地元の青年のサッカーチームの試合が行われていた。

 翌日の午前中は街歩きをした。ショッピングモールがまだないので、伝統市場とその周辺の個人商店が街の中心だ。ちなみに、このマムジュでは、ホテルでも街でも、外国人らしき人はまったく見かけなかった。州都とは言え、あまり有名な観光スポットもないので、外国人の来訪はほとんどないのだろう。街中でも市場でも、歩いていると、通りすがりの人を見ると大体、目が合う、つまり、人々は外国人である私を見ているのだ。

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市場では野菜や魚が売られていた

 実は、各州巡りを楽しむトラベラーの中でも、割と「まだ行ってない」率が高いのが、この西スラウェシ州である。以前、別の場所で旅好きのインドネシア人夫婦と話し込んだ時にも、お互いに「お、西スラウェシ州も行ったんだ! あそこはカラムプアン島ぐらいしか行くとこないからなー」と盛り上がり、マムジュで泊まったホテルまで一緒だったことがある。本当に首都機能が移ることがあれば大きく変貌するだろうが、果たして、その日は来るのだろうか。

 豊かな自然に恵まれた西スラウェシで、『ロンリープラネット』にはMemasa Valleyが見所として出ているが、近隣の街から陸路で相当に時間がかかることから、当面は、なかなか行かない州の1つかもしれない。

 

 

鍋山俊雄(なべやま・としお)
インドネシアに在住期間は計10年になる。仕事でジャワ、カリマンタン、スマトラへの出張が多いことに加えて、「週末弾丸トラベラー」としてインドネシア各地を放浪し、全34州を訪問した。

 

インドネシア全34州の旅
#0 空港
#1 北スラウェシ州 インドネシアの最北端?
#2 アチェ州 インドネシア0キロ地点と津波の跡
#3 ブンクル州 英国の砦、スカルノの足跡
#4 南カリマンタン州 川の街の水上マーケット
#5 バンテン州 バンテン王国跡へ、列車の旅
#6 西カリマンタン州 春分の日に赤道へ 影がなくなった!
#7 南東スラウェシ州(上) 波の音しか聞こえない、ぜいたくな空間
#8 南東スラウェシ州(下) インドネシア最大級、ブトン王国の城壁都市。
#9 バンカ・ブリトゥン州 アホック前知事の故郷、「ラスカル・プランギ」の島。
#10 リアウ諸島州 最北端の島の1つ。石群が織りなす造形。