【インドネシア全34州の旅】#11 西スラウェシ州 インドネシアの真ん中

【インドネシア全34州の旅】#11 西スラウェシ州 インドネシアの真ん中

2021-06-08

文と写真・鍋山俊雄

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 ジャカルタの首都機能をどこに移転するか検討されていた際、ユスフ・カラ前副大統領が、ある都市の名前を挙げたことがある。それが、2004年に南スラウェシ州から分離した西スラウェシ州の州都マムジュである。

 南スラウェシ出身のカラ前副大統領によれば、マムジュはインドネシア地図上でちょうど中間に位置し、スラウェシ最大の都市マカッサルからも中部スラウェシ州州都のパルからもアクセスが良い。確かに、改めて地図を見てみると、そうかもしれない。しかし、インドネシア人の友人に「マムジュ」と言っても、ピンと来た顔をする人にはあまり会ったことがない。

(西スラウェシ州)マムジュの空港ビル
伝統家屋風の空港ビル

 このマムジュに行くには、スラウェシの玄関であるマカッサルからプロペラ機に乗り換えて、およそ1時間である。マムジュの小さな空港に降り立つと、市の中心までは、山間の道を車でおよそ1時間余り。空港からのタクシー運転手に「マムジュ観光では、普段、どのような所に行くの?」と聞いたら、うーんと考えながら、いくつかの海岸や滝などの名前を教えてくれた。

 このマムジュから東に向かい、山を越えると、タナトラジャのある南スラウェシ州である。トラジャではクリスチャンのトラジャ人が中心であるが、このマムジュはマンダル人が約半数を占めており、イスラムが多数派を占める。

 ようやく街に入って山の方を振り返ると、2つのオブジェが目を引く。

 1つは立派なモスクだ。私は旅行に行った時には必ず、「Mesjid Raya」や「Mesjid Agung」と呼ばれる、そこで最も大きなモスクを探して写真を撮ることにしている(東部に行くとクリスチャンが多くなるので、教会の方が立派になっていくが)。ムスリムの多いインドネシアでは、どんな小さな村でも、大きな街でも、モスクがある。デザインに凝っていたり、海の上にあったり、伝統建築を組み合わせたりと、見ていて楽しい。34州のほぼ各州でモスクを見てきたが、色合いやデザインという点で、個人的に、このマムジュで見たモスクは最も美しいモスクの1つだ。

色合いも美しい西スラウェシの大モスク

 もう1つのオブジェは、山の上に並ぶ 「MAMUJU CITY」の看板である。Hollywoodの看板のように山肌に都市名を掲げているのは、私が見た中では、JAYAPURAとBATAMと、ここMAMUJUである。

(西スラウェシ州)Mamuju CIty の看板

 ホテルはさすが州都で、思いの外、立派。部屋の窓からは、すぐ目の前に島が見える。まずは、その島(カラムプアン島)に行ってみようと、港を探すことにした。ホテルのフロントで、島に渡る船はどこから出ているのかを確認すると、ホテルの目の前の大通りの突き当たりにある小さな港から出ているとのこと。

(西スラウェシ州)海岸沿のホテル
宿泊した海岸沿いのホテル
(西スラウェシ州)ホテルの窓から見えるカラムプアン島
ホテルの窓から見えるカラムプアン島

 ホテルの前はジャカルタ並みの片道3車線、合計6車線の大通りである。とは言っても、車は片道1車線でも余る量しか通っていない。

(西スラウェシ州)ホテル前には片道3車線の大通り。車は全然通らない。
ホテル前の片道3車線の大通り。渋滞もない

 港までオジェックで。島までは船で30分ほどで行けるが、客が集まらないと出航しないとのこと。夕刻に近付いていたこともあり、交渉してチャーターすることにした。

満員になったら出発する船

 島に着くと、結構きれいな浅瀬の海岸で、シュノーケリングが楽しめそうである。島民は島の外周に沿って海沿いに居住しており、小さい村がいくつかある。家の多くは海沿いにあり、庭先に船が停留してある。多くは漁民だ。

(西スラウェシ)カラムプアン島へのチャーターしたボート。カラムプアン島に到着

(西スラウェシ州)カラムプアン島の海岸
島の海岸の眺め

 海岸の村をしばらく散策すると、大きな天幕で作った集会所があり、色彩豊かに装飾している。その日の夕方に結婚式があるそうで、村の人々が集まり始めている。写真を撮っていると子供たちが物珍しそうに寄って来た。

臨時に組み上げた、即席の結婚式場らしい
カラフルな飾り付け
カメラを見て物珍しそうに寄って来る子供たち
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家の裏手には「自家用船」が停泊

 船でマムジュの港に戻り、夕暮れの街を散策した。先ほどの真新しい大通りにはショッピングモールが建設中である。州都として、いろいろ整いつつあるのだろう。一方で、その道路の反対側には、歴史を感じさせる2階建てのルコがある。

大通りの片側にはショッピングモールを建設中
(西スラウェシ州)インドネシアの離島でよく見られる華人系の色使いのルコ
古くからの華人系商店、2階建てルコ
海沿いの憩いの広場。「平和の鐘」が中央に

 ホテルへ戻る道すがらの海沿いには市民の憩いの広場があり、にぎわっていた。先ほどの大モスク横の広場では、地元の青年のサッカーチームの試合が行われていた。

(西スラウェシ州)大モスク前の広場ではサッカーの試合に観戦客が集まる
サッカー観戦
マムジュの伝統家屋

 翌日の午前中は街歩きをした。ショッピングモールがまだないので、伝統市場とその周辺の個人商店が街の中心だ。ちなみに、このマムジュでは、ホテルでも街でも、外国人らしき人はまったく見かけなかった。州都とは言え、あまり有名な観光スポットもないので、外国人の来訪はほとんどないのだろう。街中でも市場でも、歩いていると、通りすがりの人を見ると大体、目が合う、つまり、人々は外国人である私を見ているのだ。

(西スラウェシ州)海岸通りから一本奥に入ったところにある伝統市場
街中の伝統市場

 実は、各州巡りを楽しむトラベラーの中でも、割と「まだ行ってない」率が高いのが、この西スラウェシ州である。以前、別の場所で旅好きのインドネシア人夫婦と話し込んだ時にも、お互いに「お、西スラウェシ州も行ったんだ! あそこはカラムプアン島ぐらいしか行くとこないからなー」と盛り上がり、マムジュで泊まったホテルまで一緒だったことがある。

 豊かな自然に恵まれた西スラウェシで、『ロンリープラネット』には「Memasa Valley」が見所として出ているが、近隣の街から陸路で相当に時間がかかることから、当面は、なかなか行かない州の1つかもしれない。