朝起きるとまず冷蔵庫へ行って、麦茶入れのようなガラス瓶に入っているジャムーを出して、花柄のホーローの小さいコップにたっぷり入れる。窓の外を眺め、スマホをチェックしながら、ゆっくりと飲む。朝には咳が出ることも多いのだが、ジャムーを飲んでいると喉がスッキリしてきて、気持ちもすーっと落ち着いてくる。「さぁ、今日も1日、やるぞ!」という気になる。
朝食は、自分で焼いた丸パンとコーヒー。「Paul」のパンが好きだが、モールは閉まっているので、パン作りを再開した。パン種を常温で2〜3時間も放置すれば勝手に発酵するので、ジャカルタはパン作りに適している。
朝食の後、バスルームへ行って、掛けてあるバティックを眺めながら、ゆっくり歯を磨く。気分転換にバティックを取り替え、チレボンへ行った時に買った、ジャワの農村風景を描いたバティックにした。
牛車を駆る人、収穫した稲束を運ぶ人、稲を突く人、漁をする人、蝋描きをする女性、羊飼い、風船売りの人と子供……のどかな農村の日常風景が布いっぱいに広がっている。
家にたくさんあるバティックの中から何気なく「これにしよう」と選んだのだが、私の持っているバティックは花、鳥、果物、動物柄が多い。これは珍しく、人を描いたバティックだ。
多分、「人が恋しい」のだと思う。こういう、にぎやかなジャワの農村風景の中に身を置きたい、と願っているのかもしれない。
このバティックのテーマは「働く」「インドネシアの人」。ユーモラスに描かれた人々のバティックを見ていると、元気が湧いてくる。この先、コロナ感染が拡大したとしても、当然ながら、ここインドネシアでインドネシア人は暮らし続けている。そして、私の生活基盤もここにある。ここで自分のできる仕事をしよう、と思う。
池田華子(いけだ・はなこ)
1999年からインドネシア在住。+62編集長。