ジャカルタで不定期に開かれている「カモロ・アート展」の案内をくださったのは、バンドン在住でインドネシアのアート好きの坂口広之さん。ジャカルタではめったに出会えないカモロ民族のアート作品を買える場なのだ。

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 カモロはパプア州ティミカの南部の海岸に住む民族。このアート展は、カモロ文化の保全活動をしているNGOが主催し、品物は直接、村で買い付ける。ティミカで操業するフリーポート・インドネシア社がCSR活動の一環として、ジャカルタまでの輸送費いっさいを負担する協力をしている。このため、値段は破格と言っていいぐらい安い。

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 作品にはすべて制作者のタグが付けられていて、売れたら、全額が制作者の現金収入となる。制作者が自分で決めた値段を好きなように付けているという。

 最初にカモロ・アートを見た時、岡本太郎が縄文美術に出会った時はこんなだったかもと思うほどの衝撃を受けた。力にあふれている。どうしてこんな造形を思い付くのかと思うユニークさ。どことなくユーモラスで面白い。カモロの人々は生粋のアーティストではないか。

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 「売れるように」とは一応考えているのだろうが、売れ筋など計算している様子はなく、好きなように、自由に作っているのがいい。お土産用に量産された物ではないし、全部が違っていて、制作者の個性が出ている。

 そして、こういったアートを好む西欧人がどんどん買って行く。ジャカルタのマーケットと生産者がダイレクトに結ばれ、仲介業者はなし。過度に商業ベースになることなく、品質は保たれている上に安く、人々は売れるので作り、貴重な現金収入を得られ、文化が保全される、という、循環のうまく行っているモデルケースと言えよう。

 貴重な品を安く買えるので、競争は激しい。前回参加した時は、開場から5分ぐらいで、めぼしい品はすべて売り切れた。買いたい品にはシールを早い者勝ちで貼るのだが、私がシールを貼った物はいつの間にかなくなっていた(別の人が買って、持ち去ったようだ)。

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 坂口さんに教えてもらったコツは、まずはシールをできるだけ早く入手する。シールを持っているスタッフと、最優先で買いたい品との最短距離を測り、開始前に動き方をシミュレーションする。開始されたら、とにかく貼る。迷ったら、まずは貼ってから、考える。小さい物は別の場所でも買える可能性があるので、狙い目は、ほかでは買えない大きい物。値段は制作者が自由に付けるので、一定していない。同じような品でも安かったり、高かったりするので、安い掘り出し品があるかもしれない。

 今回は、前回ほどは競争が激しくなかったが、それでも、いくつか目を付けていた品は、会場を一巡する間にすでにシールを貼られていた。一番買いたい品は一番にシールを貼った方が良いだろう。

 なかなか買えないカモロ・アートなのだが、坂口さんの妻のタタ・ルムンガンさんが来年2月、バンドンにインドネシア工芸品の店「イマ・チャンプロン」をオープンし、カモロ・アートも扱う予定だ。

 
カモロ・アート展で買った物。
 
食物連鎖の盾
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カモロ・アートの中で最も美しく、また、カモロらしいと思って惹かれたのは、透かし彫りのような盾。とても盾の用はなさないだろうと思われるほど大胆に空間を抜いてある。造形も大胆で、そのアートセンスには驚愕する。これは、魚を食べている鰐、鳥を捕まえている人が1つになった不思議な形。食物連鎖か? 右の線が中途半端に切れているのは少し気になるが、まぁ、いいとする。(H)
 
 
 
ヤシの実形の盆
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「名も知らぬ遠き島より流れ寄る……」のヤシの実は、南の島の風物の筆頭。祖母も大好きだったヤシの実の形をした物はつい買ってしまう。先のとがったシェイプと突き出た芽(持ち手にもなる)など、日ごろ観察しているからか、非常にリアル。表はただ浅くくり抜かれているだけだが、使っている時は隠れてしまう底面に模様が彫られているのが面白い。(H)

 
 
 
魚のスシ入れ?
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リアルな造形。とがった歯、大きな目の、真っ黒の魚。蓋をぱかっと取ると入れ物になっているのだが、非常に浅いので、使うとしたらアクセサリー入れぐらいだろうか。蓋がきっちり閉まらないのはご愛嬌。デザイナーのハリー・ダルソノが蓋をぱかっと開けて「スシ〜」、弊誌記者もまったく同じギャグをやっていたので、インドネシア人のツボはそこかもしれない。(H)

 
 
 
キーウィーに似た鳥
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あまりのかわいさに惹かれて購入。木の材質もそれほど良くないし、透かし彫りも特に細かくない。しかし、この鳥の形と目があまりにもかわいい。アヒルだと思っていたが、くちばしが非常に長いので「キーウィーでは?」という説もあり。キーウィーに似た、パプアに生息する鳥なのかもしれない。日本の欄間のように壁に飾りたいところだが、今のところ、ぴったりの場所は見つかっていない。(H)

 
 
 
大漁だ!
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大きな魚の尻尾を小さな人間がつかんでいる。大漁のお守りみたいで景気がいい!と勝手に解釈して購入。魚の口の下が空いていて、全部が装飾されていないのが、良いバランスを保っている。ダイニングテーブルの幅にぴったり。あつらえたように色もなじんでしまったので、ここが定位置に。(Q)

 
 
 
「無の空間」を内包する魚
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買いに行く前、取材写真をチェックした時から気になっていた、この形。魚のデフォルメが未来的で、くり抜かれた体の中に宇宙が広がっているような、「無の空間」に惹かれた。写真では大きさが把握できなかったのだが、実物を見て、あまりの長さに少し躊躇した。しかし、何とかなる(する!)と決意して購入。案の定、部屋の天井高では垂直に立てられなかったが、斜め置きの方が、壁に映る影の形に変化が出るのを発見。敢えての斜め置きです。(Q)

 
 
 
ユーモラスなヒクイドリ
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ラグナン動物園に「ヒクイドリの庭」と勝手に呼んでいる一角がある。1羽ずつが「個室」で仕切られていて、柵に近付くと、険しい目つきでロックオンされる。恐ろしげだが、なぜか目を離せない強さに惹かれていた。パプアで彫られたヒクイドリは、少しユーモラス。表も裏も彫刻されているが、書き割りみたいで、正面から対面しても、怖くない。リビングルームのガードマンとしてはちょうどいい。(Q)

 
 
 
木につかまるアリクイ
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「頭は鳥、体は人間」と説明され、ちょっとよくわからなかったのだが、形が面白いのと、重くてどっしりした木の質感が気に入って購入。帰って来てよく見たら、「アリクイ」そのものだと判明した。手足で木につかまってアリを探しているのか、パプアでの野生の姿を想像すると見飽きない。(Q)