パプア産のカカオを使ったチョコレート「パラダイス・パプア」(Paradise Papua)。森の中から取って来たカカオで作る、希少なチョコレートだ。パプアの人々が経済的に自立するための民衆交易の手段であり、立ち上げ当初から日本とインドネシアを結んできた。ジャヤプラにあるチョコレートを製造する会社「カカオ・キタ・パプア」(PT Kakao Kita Papua、以下「カカオ・キタ」)のマーケティング・マネジャー、津留歴子さんに話を聞いた。(写真は津留さん提供)


一面の森、「カカオ農園はどこですか?」
パプア州の州都ジャヤプラ近辺。津留さんに「ここがカカオの栽培地域です」と見せられた写真は、森! 一面の森! どこにカカオの木があるのやら、という、うっそうとした森が広がっている。これには、カカオ買い付けの視察に訪れたチョコレート会社の人たちも、「カカオ農園はどこですか?」と驚くそうだ。
パプアの先住民は森の中に広大な土地を所有しており、自分たちで食べる野菜のほか、換金作物であるカカオ、バナナ、ココナッツなどを森に植えている。カカオを収穫する時は森へ行き、さまざまな植物の生い茂った中からカカオの実を取って来る。「カカオ農園」に比べて、栽培や収穫の効率は悪いが、これが「森と共に生きる」パプアのやり方だ。

パプアのカカオは元々、オランダ植民地時代に苗木が持ち込まれた。カカオ栽培には十分な雨と日光が必要で、赤道直下にあるパプアの低地はその条件に合っていた。こうして、パプア北海岸の付近でカカオが栽培されるようになった。
「『パプアのカカオの種類は何ですか?』と、よく聞かれるんですが……」と津留さん。カカオの品種として代表的なのは、クリオロ、フォラステロ、トリニタリオ。クリオロはまろやかな味だが病虫害に弱いため、生産量は非常に少なく、「幻のカカオ」と呼ばれている。クリオロは、豆を割ると乳白色だ。実は、パプアのカカオ豆も割るとかなりの確率で乳白色で、「クリオロ系とみられています」と津留さん。



森から取って来たカカオは、生産者が自宅で豆を発酵させ、その後、乾燥させる。乾燥させた豆は、カカオ生産者約50人がメンバーとなっている「協同組合」に集められる。カカオ・キタは、この協同組合から乾燥豆を購入している。「乾燥豆が500キロあります」といった連絡が入ると「じゃあ、行きまーす」と、取りに行く。「年間で最低、10トンは欲しい」という希望は伝えてあるものの、収穫量は生産者任せだ。
日本とインドネシアを結ぶチョコレート
カカオ・キタの始まりは2010年にさかのぼる。日本で「ビーン・トゥ・バー」(Bean to Bar)という言葉が使われ始めたころ、インドネシアでは「インドネシア国産チョコレート」ブームが起きる前のことだ。
日本の「グリーンコープ生活協同組合」(本部・福岡、以下「グリーンコープ」)に、組合員からの問い合わせがあった。「アフリカのカカオ農園での児童労働に関する本を読んで、ショックを受けた。児童労働のないチョコレートは食べられますか?」。
グリーンコープは、民衆交易を手がける会社「オルター・トレード・ジャパン」に連絡し、当時、同社の社員としてインドネシアに駐在していた津留さんに問い合わせがあった。津留さんは1995年に初めてパプアを訪れて以来、パプアと関わり続けてきた。津留さんは「パプアにはカカオがあります。児童労働はないです」と、パプアのカカオを紹介した。

カカオ・キタの代表となったパプア人のデキー・ルマロペンさんは「パプアには豊かな自然がある一方で、パプア先住民はインドネシアで長く差別を受けてきた。将来にわたって、この自然を守り、先住民のアイデンティティーを守るには、経済的自立が大切だ。顔と顔が見える『民衆交易』をやっていきたい」と語る。「私たちのカカオ」という意味の会社名「カカオ・キタ」は、津留さんの恩師でもある故・村井吉敬さんが付けた。
2017年から、カカオ・キタで作ったチョコレートの日本への輸出が始まった。ジャヤプラで製造するには冷蔵輸送や機械の問題があるため、乾燥豆をジャワ島の工場に送り、そこで委託加工している。
カカオ・キタで作っているチョコレートは現在、3種類。シグニチャーであるダークチョコレート「カカオ67%」の材料は、カカオ豆と砂糖のみ。乳化剤や香料などの添加物や、その他の材料はいっさい使っていない。カカオ本来の味をそのまま引き出したチョコレートだ。
ココナッツ入りの「ココナッツ」も市販のパウダーは使わず、ココナッツの胚乳を削ってオーブンで乾燥させ、パウダーを手作りしている。そして、新作の「コーヒー」は、パプア山岳部で取れたコーヒー豆をキャラメル・コーティングしてから、チョコレートに混ぜている。「コーヒー」は現在、インドネシア国内のみでの販売だ。チョコレートのほかに、カカオ・パウダーやカカオ・ニブも買える。
「チョコレートから見えるパプアの世界を知ってほしい」と津留さんは話す。パプアの森のカカオを使ったチョコレートはインドネシアのお土産にもぴったりだ。インドネシア国内であれば、カカオ・キタから直接、購入できる(値段は価格+送料)。日本ではAPLAのオンラインサイトなどで購入できる。


■インドネシア国内での購入
チョコレート「カカオ67%」「ココナッツ」 1枚(45グラム)4万ルピア
チョコレート「コーヒー」 1枚(同)3万5000ルピア
カカオ・パウダー 150グラム7万ルピア、500グラム23万ルピア
※値段は2025年8月現在、送料別
お申し込みメール:kakaokita10@gmail.com(日本語可)
■日本での購入
・APLAオンラインショップ
※夏場は配送が難しいため、9月ごろから販売の予定

