ジャカルタでいま流行っているもの、それはエス・コピ・スス(ミルク入りアイスコーヒー)です!
ブームを作った店は南ジャカルタ・チプテにある「トゥク」。評判を聞いたジョコ・ウィドド大統領(ジョコウィ)が日曜に家族で訪れたほどだ。
45平方メートルしかない小さな店の前にはゴジェックのバイクがずらーっと停まり(店を探す時は、ゴジェックのバイクが目印になる)、ゴジェック運転手がレジから入口をはみ出して店の裏手にまで行列している。店内もゴジェック運転手でいっぱいで、まるでゴジェックの事務所に来たかのよう。その混雑ぶりにはびっくりする。
一般客はゴジェック運転手の行列とは別になっているので、そちらには並ばずに、レジに真っ直ぐ行って注文を告げればよい(焙煎所を兼ねたアンタサリ店を近日中にオープンし、ゴジェックはそこでの受け付けとしてチプテ店の混雑を緩和する予定)。ちなみに、店内には注文品が出来るのを待っている間に座るベンチ風の椅子はあるものの、基本的に、持ち帰りのみ。ゆっくりコーヒーを飲む場所ではない。
なぜこんなブームになったのか?
オーナーのティヨさん(28)は特にコーヒー好きというわけではなく、純粋にマーケティング志向の人。「コーヒーは実用的な物でしょ。もっと身近に飲める物にしたかった。もっと普通に、もっとインドネシアらしく、ね。目指したのは『コーヒーショップ(カフェ)』と『ワルン・コピ(屋台)』の間」とティヨさん。ど直球で「インドネシア人の好きな味」を目指し、チプテ店の隣人たちに試飲をしてもらい、改良を重ねた。
インドネシアはコーヒー産地ではあるものの、コーヒーに注目するようになったのはここ10年ほどのこと。2007年に国産コーヒー店のパイオニアである「アノマリ・コーヒー」がオープンした後、カフェ・ブームが始まった。やれシングル・オリジンだ、豆がどうの、焙煎がどうのと言いながら、おしゃれなカフェでブラックコーヒーをたしなむ若者たち。しかし、「本当においしいと思っているの? 本当は冷たいのが好きでしょ? 甘くてクリーミーな味が好きでしょ?」と、これまでの固定観念を覆したのが「トゥク」なのだ。
「トゥク」はジャワ語で「売る」という意味で、カフェではなく実用的な小売りのイメージだ。完成したコーヒーが「Kopi Tetangga」(コピ・トゥタンガ=「となりのコーヒー」という意味)。
豆はスマトラ、ジャワ、バリ産の3種類のブレンド。焙煎はミディアム・ダーク・ローストと、やや苦めにし、フレッシュミルクにクリームを加え、グラ・アレン(砂糖ヤシの赤砂糖)を合わせる。グラ・アレンがほのかな香りと後を引く甘さを与えているが、コーヒーの苦みと打ち消し合って、甘過ぎない。苦くないし、甘くもない、絶妙なバランス。ブームになってから、あちこちでエス・コピ・ススが売られ始めているが、本家のトゥクはさすが、パンチの効かせ方と味わいの複雑さが違う。
たっぷり氷が入っているので、冷たくてリフレッシュする。最初は「エス」だけだったが、後に「パナス(=ホット)」も追加し、ジョコウィが飲んだのは「パナス」の方。
1杯1万8000ルピア(2万ルピア以下!)という安さも人気の秘密。豆は自家焙煎、店はテイクアウト用にしてインテリアを省略、薄利多売、というやり方で、コストを抑えている。ブレンドしたコーヒー豆「トゥタンガ」も買えるので、「今、流行りの……」として、お土産にどうですか?
Ayo, tuku…(買ってみよう!)
●Toko Kopi Tuku/Jl. Cipete Raya Blok B No.7, Cipete, Jakarta Selatan/7:00-22:00(オジェック注文は15:00まで)/土休み、日はゴジェックへの販売なし(一般客のみ)/パサール・サンタ店、ビンタロ店あり。近日中にアンタサリ店がオープンの予定/エス・コピ・スス・トゥタンガ(Es Kopi Susu Tetangga)1万8000ルピア。
ジャカルタの一番アツイ場所はどこだ?!