訪れるたびにその土地の料理にうっとりし、食べ尽くせないことを悔やみながら戻って来る国があります。ベトナムはその筆頭です。インドネシア料理も大好きですが、また異なるスパイス、そして多彩なハーブ使いなど、その味わいのバリエーションには感心してしまいます。
現地の味をどうにか家で作れないかとやってみることもあり、今回ご紹介するのは、フォー・ガー(鶏スープの米麺)にチャレンジした際に出来たレシピです。本場の作り方とは違うでしょうし、「フォー」を名乗るには躊躇してしまうのですが、それでも大分、「近い」味が出来たのではないかな、と思っています。
作り方は至って簡単です。蒸し器を使います。香味野菜とスパイス入りのお湯で、あらかじめ下味をつけた鶏を蒸すことによって、鶏の風味は逃さずにスープに活かし、蒸し鶏はしっとりジューシーに仕上げます。スープに対して蒸し鶏の量が多いので、蒸し鶏は別途、サラダやサンドイッチなどにしてお召し上がりください。
ポイントは、下味の際に使うパクチー(香草)の根。パクチーの根は葉以上に強く香るので、これを活用しない手はありません。パクチー好きな方は是非、根付きの物を買って、お試しください。
わが家では、日々の料理で出るニンジンや大根の皮、ネギの青い部分などを冷凍して保存しておき、スープで使う香味野菜に活用します。ゴミを減らせますし、野菜も余すところなく使い切ることができます。
魚醤はベトナムの場合、ヌオックマムですが、タイのナンプラーでも問題ありません(インドネシアで「ケチャップ・イカン」として売られているもののほとんどは、タイのナンプラーです)。
フォーにしたくて考えたレシピなので、蒸し鶏とスープが出来たら、麺を入れたくなります。フォーのような米麺はもちろん、冷や麦などの乾麺や、冷凍うどんでも、おいしく食べられます。蒸し鶏とスープをおかずとお汁として、ご飯と一緒に召し上がっても。ちょっと異国風の味わいを、お楽しみください。
材料
鶏胸肉 daging ayam (dada) 1羽分
魚醤 kecap ikan 大さじ1半
はちみつ madu 大さじ1
ニンニク bawang putih 1片
パクチーの根 akar daun ketumbar 大体、2株分
[スープ]
ショウガ jahe 30g
レモングラス serai 30g
大根 lobak 20g
ニンジン wortel 20g
ネギの青い部分 daun bawang (bagian hijau) 15g
シナモンスティック stik kayu manis 1/2本
八角 bunga lawang 1片
粒黒コショウ biji lada hitam 小さじ1/2
水 air putih 800ml
塩 garam 適量
魚醤 kecap Ikan 適量
ライム jeruk nipis 適量
作り方
1.鶏の胸肉は半分に切り分け、脂身や筋などがあれば取り除く。串やフォークなどを使って全体を刺し、味が染みやすくする。はちみつ、魚醤に、すりおろしたニンニク、細かく刻んで潰したパクチーの根を合わせて、よく混ぜたものを全体に揉み込む。ラップをして、1時間から一晩、寝かせる。
2. ショウガとレモングラスはたたいてつぶし、大根とニンジンは半分〜1/4に切る。蒸し器になる大きさの鍋に、塩と魚醤以外のスープの材料を入れ、火にかける。沸騰したら弱めの中火に落とし、蒸し器に1の鶏を入れる。15分ほど蒸したところで、鶏肉の中まで火が通ったか確認し、火が通っていれば、取り出して自然に冷ます。
3.2の蒸し器に残っているスープを漉して、香味野菜やスパイスを取り除く。鍋に戻し、塩、魚醤で好みの味に整える。 麺で食べる場合は、別途、麺を湯がき、好みの野菜やハーブなど (いずれも分量外)と、裂いた2の鶏を添え、ライムを搾る。
西宮奈央(にしみや・なお)
イギリス出身の写真家の夫とバンドン在住。ご飯は食べるのも作るのも大好き。インドネシアで簡単に作れる料理をご紹介します。
西宮奈央さんのMASAK KIRA-KIRA バックナンバー
#1 イチゴとクマンギのシャーベット
#2 ココナッツ・レモン・チキン
#3 ソムタム2種
#4 パン粉のスープ
#5 花椒風味の中華風チキン
#6 キャロット・ジンジャー・ケーキ
#7 タンドリー風の焼き魚
#8 桜色のビーツのペスト
#9 チェコ風ジャガ芋のパンケーキ
#10 ナツメヤシのトリュフ
#11 ラープ
#12 キャッサバとココナッツの焼き菓子
#13 3色のスープ
#14 アボン・イカン
#15 イカン・カンジョリ
#16 トウガラシのジャム
#17 カリフラワーのスパイシー・フリッター